初恋
第4章 赤い屋根のうえ
横断歩道を渡るとき、掴んだ彼女の手が震えているような気がした。
俺はとくに気にしなかった。だって今日は凍えるくらいに寒い日だから。
後から思えばこの時の彼女は──信号待ちの車たちから身を隠すように、俺の背中にくっついていたんだ。
───
それからしばらく歩いた。
普段から運動なんてしない俺は、走ったわけでもないのに息を切らしていた。
「ねぇどこ?わたしの家はどこ?」
全く疲れを見せない隣の声が、むかつく。
パンツ見えそうなくらい木登りに没頭するおてんば女と、張り合ってられるか、と
そんな負け惜しみは、心の内にとどめる。
あれから坂道を上り続けた俺たちは、中心街を見下ろせる小高い住宅地に来ていた。