初恋
第5章 君がくれたもの
晴れの日の夕方なのに、この公園で遊ぶ人はいない。
これだけ寒い日にはどんなに活発な子供だろうと家の中に閉じこもる。
だからその涙を見る人は──…いや
もしそうでなくても、君の姿を見る人は──。
「…ッ…さっきの……子がね、……わたしに自慢するんだぁ……」
砂場の縁に立って君の背中を見下ろす俺に向けて、君は口を開いた。
「……自分の耳と、尻尾は……いなくなった猫に、そっくりなんだ って……ッ──だから、自分は、ご主人様に…選んで…もらえたって」
砂にまみれて汚れたワンピースの裾を、握りしめながら。
「…この耳と尻尾で 生まれてきてっ…よかったんだっ……って……でも ね、ご主人様は、『 お前は鼻も可愛いね 』って褒めてくれた……らしいの。──それってさ…ッッ…!! 」
「──…」
「……それなら…さ、わたし、絶対に……勝てない じゃんかぁ……!! 」
耳と尻尾が同じで
向こうは鼻まで可愛いなら、自分に勝ち目なんてないって、まるで彼氏にフラれた女みたいに……君は嘆いていた。