初恋
第5章 君がくれたもの
俺の指が縦に滑るのに合わせて、君は……くしゃりと目を細める。
そして泣きながら笑い始めた。まるで蕾が花開いたかのように──可憐に頬を染めて。
「思い……出した、わたし…っ…。あなたのこと忘れてないよ」
「……」
「あなたの服もびしょ濡れで、ね、抱っこされてる間……わたし、凍え死んじゃいそうだったもん…っ」
この自分勝手な性格は、猫の特権なのか。
俺のおかげで助かっておきながら贅沢言うな。
「──…でも…なんだか胸の奥があったかくなったの、覚えてるわ」
ただ、頭に浮かんだ文句も一瞬でどうでもよくなってしまうほど、泣き笑う君は美しかった。
ホントもう、目を背けたくなるくらいに
眩しくて……。