初恋
第5章 君がくれたもの
「猫なら猫らしくもうちょっと……っ、警戒心持てば?」
振り回されるこっちの身にもなれっつーの。
俺は優しさの欠片もない言葉を吐き捨てる。
だが何故かこのタイミングで、君の嗚咽は止まったみたいだ。
君はこちらに振り向いて、赤くなった大きな目をパチパチと瞬かせていた。
その瞳にどんな感情が映りこんでいたとしても、変わらず君の瞳は綺麗に透き通っている。
俺は仏頂面のままその瞳に吸い寄せられるように近付く。
君の隣に立って、砂場に片膝を付けて座った。
涙に濡れた黒髪が張り付いたほっぺたに、そっと指で触れた。
「もう泣くな」と言う代わりに
目尻にたまった雫をぬぐってやった。