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裏小屋

第5章 逃げる

 桝本は自分の寝袋を出した。

 すると、なにを思ったのか、勝山が突然、川の縁ギリギリまで入っていった。

「勝山、なにをする気や」

 高橋が止めに入る。

 勝山はふらつきながら前を見据え、両手を組んだ。



「臨、兵、闘、者、皆、陳、裂、在、前」


 なんと、勝山は突然、九字印を唱えた。

「え、なにそれ?」と桝本。

 すると突然、石柿が動きだし、白いモヤも消えていたのだ。

 勝山は当時あった漫画の「孔雀王」の真似をして九字印を唱えたのだ。

 偶然なのかどうか、唱えた直後に石柿の体が動いた。

 これは、唱えた勝山が一番驚いていたが、まさか効果があるとは思わなかった。いや、その効果が働いたかどうかは、実際にはわからない。

 だけど、徐霊やまじないにある印結びだというのは、確かであるため、多少の効果はあっただろうと感じている。

 桝本は即席ロープを放り投げ、なんとか、石柿を引っ張り上げることが出来た。

 助かった。

 全員、無事だった。

 全身ずぶ濡れで冷えた体、雨はまだ続く。

「勝利の酒、一口ずつどうだ?」

 勝山のブランデーを少しずつ飲み、みんなで抱き合った。


 助かった。


 


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