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裏小屋

第5章 逃げる

「なるほど」

 馳谷はわかったようだ。

 桝本はそれらを繋ぎ合わせ、ロープにしようというのだ。

「ひろっちゃん、寝袋貸して」という桝本の頼みに、高橋は惜し気もなく、寝袋を差し出した。

 シャツとタオルを繋いだロープの先に、寝袋をくくり、それを石柿に受け止めてもらうというものだ。

 石柿が叫んだ。

「やめろっ! いい加減、離してくれぇーーっ!」

 石柿を見ると……。

 腰のあたりに、なにやら、白いもやのようなものが、絡みついていたのだ。

「ヤバいであれ……」と高橋が声を震わせる。

 その時、桝本が「あれは、小屋とか洗面所におった男の霊に違いない」と、言った。

「俺もそう思う。早く、石柿を助けないと、大変なことになる」と馳谷も同様に思っていたようだ。

 桝本が「いしがきっ!! これを投げるから、受け止めろっ!」と即席ロープの寝袋を石柿に投げた。


 寝袋は石柿の顔面にヒットし、尚且つ、寝袋のみがはずれ、川に流された。

 のちに、何年先もこのことについて、石柿と高橋に咎められることになる。

「ゴメン、石柿!」

「まっすん!! 僕を殺す気やろぉーーっ!!」

「そんなつもりは微塵もない! お前もちゃんと受けとれよ!」

 それを聞いて高橋が「お前、俺の寝袋をどうしてくれんねん!!」

 すでに流され、滝の下。

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