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好き心少なからず

第13章 人が好いヒト~田口×姉ヶ崎~

『田口くん、いい人だね』

違うんだよ。

姉ヶ崎さんを心配してるんじゃない。

もしあの時、姉ヶ崎さんを残して帰ったら、自分の行動を後悔しそうで…

それが嫌だから、一緒に残ったんだ。

手にした紙袋を見て、眉を寄せる。

だから、こんな…お礼なんていいのに。

自転車を漕ぎ始めると、頭の中に香澄の姿が浮かんだ。

『私だから優しくしてくれる訳じゃないんだよね!?』

あの時言えなかった答えを、今なら言える。

…そうだよ。

僕が誰かに優しくするのは、ただの自己満足なんだ。

僕は『いい人』なんかじゃない。


【おしまい】

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