テキストサイズ

禁断背徳の鎖・絡み交錯する運命の赤糸(改訂版)

第2章 衝撃的な出来事




それからの私は、学校が終わると、時々あのアトリエに顔を出すようになっていった・・


アトリエのあの男の人は、杉田季永さんと言って‥
アトリエの名前は『アトリエ杉田』そんな事も気付かないで入った私‥
何かに魅せられるような?


夢のような錯覚を覚えた感じが、確かにあったとは思う。




季永さんに習って、少しずつだけど絵を描いていく事に‥


風景が分からないと言ったら、季永さんは風景の写真をいっぱい出してくれた。


「これ全て季永さんが?」


「そう、若い頃は旅が好きでね、色んな場所に行って写真を撮ったんだよ」


「凄い‥こんなにいっぱい‥
どれも綺麗な景色」


「それを見てイメージしてごらん美紀‥
そうしたら、自分の描きたい物が自然と浮かんでくるよ‥‥」


私は写真を見ながら、描きたい風景を考える‥


それに‥‥


季永さんに美紀と呼ばれる度に、何故か胸がトクンッと鳴ってしまう‥
でも嫌じゃない感覚。



「海と‥空‥
夏の風景‥‥」


「うん、思った事を描いて見なさい?」


「はい‥」


真っ白いキャンバスに向かい、私が想像した事を絵にしていく‥
こんなに本格的なのは初めてで、線1本入れるのにも緊張してしまうけど。


毎日、少しずつ絵にしていく私‥
夏の雲の多い大空に、それに繋がる海‥側には小さな建物‥‥
時間を掛けて、白いキャンパスの中を、夏の形にしていく間が楽しい。


季永さんも、何時も後ろから優しく、私の描くのを見てくれているし‥



「そう、才能あるよ美紀‥」



 "ドキッ‥!"



後ろから覗き込んで話をす季永さんの息が、不意に私の耳に掛かった‥



「あっ‥‥」


ピクンと身体を揺らす私、季永さんの息がくすぐったくて‥
だけど、何か違うものも感じた・・


「あ‥ごめん、嫌だったね」


私は慌てて振り返って、季永さんを見た・・



「い‥嫌じゃ‥なかった‥です‥
何だか変な感じだったの‥‥」


思った事を素直に言葉にしてみると‥



「・・・美紀‥‥」


もう一度、耳元で話しかける季永さん‥
その不思議な感覚に、私は思わず、季永さんの両腕を掴んでしまった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ