君のKISSに夢☆CHU
第12章 俺様系の兄
恥ずかしくて下を向いた私の頭を、輝愛が優しく撫でる。
「素直な女、俺は嫌いじゃない。なぁ、さっきのプレートとこのカクテルのご褒美を俺にくれよ。」
「えっ?」
訳がわからず、顔を上に向けると輝愛が怪しく微笑んでいた。
「俺、今夜はもうすぐあがりだ。俺の客ももういないから、今夜は俺に付き合え。」
他の人に聞かれないように、耳元で囁くように言う。
私はコクンと頷く。
「お前の最高なKISSを俺にくれ。」
甘く囁かれたその言葉に、頭がクラクラしてくる。
「会計して、店の裏で待ってろ。すぐ行くから。」
そういい残すと、輝愛はまたキッチンへと入っていった。
その姿を見送って私も席を立ち会計を済ませる。
会計をしていると、シンさんが声を掛けてくれた。
「今日もありがとうございました。また来てくださいね!」
「ありがとうございました。すごく楽しかったです。」
シンさんが急に少し不安そうな表情を見せて私に言う。
「桜音ちゃん、余計なお世話だってわかってるんだけど、輝愛を本気で好きにならないようにね。傷つくのは、桜音ちゃんだから。」
シンさんの言葉に胸が痛む。
輝愛にとって女はビジネス!
それはわかってる。
そこに愛がないことも…。
「シンさん、ありがとう。大丈夫です!」
「そう。良かった。またのお越しをお待ちしてます。」
シンさんがドアを開けて見送ってくれた。
私は店の裏で輝愛を待つ。
愛のない、でも最高のKISSをしたい為だけに。