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原稿用紙でラブレター

第3章 消費期限は本日中






「…ごめん、大丈夫?」

「うん…へーき…」



あの後、しばらく動けなかった俺たち。


気怠い体はそのままに、初めてひとつになれた余韻に浸っていたんだけど。


隣から"どうしよ…動けない"って焦った声が聞こえて一瞬で我に返った。


それから嫌がるにのちゃんを抱っこしてお風呂に直行し、抵抗されながらも全身をきれいに洗って。


とりあえずベッドに寝かせて、ひたすら腰を摩り続け今に至る。



初めてだったのに…


無理させちゃったなぁ…


だってもう…


にのちゃん、気持ち良すぎなんだもん…!



放っておいたら蘇ってくる先程の光景につい頬が緩んでしまう。


うつ伏せた細い腰をスウェット越しにさわさわ撫で続けていると、ふいにもぞっと動いて俺の方に顔を向けた。


「ありがと…もう大丈夫だから…」


"それより…"と続けながらゆっくりと体を起こす。


「大丈夫…?」

「うん、平気だから…」


ようやく向かい合う形になり、ちょこんと正座をしたにのちゃんにつられて俺も居住まいを正した。


「相葉くん…
19歳、おめでとう」


穏やかな声が届き、ぺこりと頭が下げられる。



あ、そういえば…


誕生日プレゼントだったんだっけ。



にのちゃんとの初体験が余りに衝撃的でそもそもの主旨を忘れかけていた。


「ありがとう…
もうほんと、最高の誕生日だったよ」


満面の笑みでそう答えれば、照れ臭そうに頬を上気させて緩く微笑んで。


そんなにのちゃんが可愛くて、また抱き締めたい衝動に駆られそうになる。



…だめだめ!


今日はもう触っちゃだめだから!



ぐっと拳を握って気持ちを誤魔化していると、ごそごそとベッドサイドの棚から小さな巾着を取り出して目の前に差し出され。


反射的に受け取ってにのちゃんを見れば、緊張したように視線を彷徨わせて小さく口を開いた。


「それも…プレゼントです…」


きゅっと下唇を噛んでこちらを窺う瞳に促され、その巾着を開けると。


「…えっ!?これっ…!」

「…うん。いつでも来ていいから…」


手の平に光る銀色の鍵を見つめて、思わず手を伸ばしぎゅうっと抱き締めた。

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