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原稿用紙でラブレター

第3章 消費期限は本日中






冬休みに入った職員室は年休を取る先生もいる為か人も疎らで。


そんな状況を良いことに、松本先生がニヤニヤしながら隣の椅子に移ってきて腰掛けた。


「やっぱ俺のフルコースで間違いなかったでしょ?」


頬杖をつき自慢気に鼻を鳴らす松本先生にちらり横目で牽制をかける。


「ご飯粒ついてるよ、あ~ん、俺がプレゼントだよ、合鍵っ!ね?ぜーんぶ相葉にハマったでしょ?」


指を折りながら楽しそうに話しかけてくる松本先生。


「もうその話はやめてくだ…」

「なになに?俺も混ぜて」


背後からぬっと現れたのは必要以上にヘラヘラした大野先生。


"そこ俺の席な"と言いながら松本先生を退かすと横並びのいつもの形になり。


「あれうまくいったのか~。良かったなぁ二宮先生」

「いや、けどローション忘れたのが減点ですね。
万が一と思って翔に預けといて良かったですよ」


ふふっと笑いながら腕を組んで机に身を乗り出す。


「えっ、マジか!あれなかったらヤバいんじゃねぇの?」

「まぁある程度慣らすようには言ってたんで。
けど初めてだから」


テストの採点をしながらも、隣で繰り広げられる会話にみるみる顔が赤くなっていくのが分かる。



松本先生には確かに感謝してるけど…


恥ずかしいからその話はもうやめて!



「マジかぁ…なぁ先生、痛かった?」

「っ、セ…セクハラですよそれっ!」


顔を覗き込みつつ大野先生にそう訊かれ、思わず大きめの声が出てしまい。


「…ふふっ、耳真っ赤だぞ。可愛いなぁ~」


ヘラヘラしたその顔と口調に、恥ずかしさで居ても立ってもいられず立ち上がった。


「ぶ、部活見てきますっ…」

「え、俺のクリスマスデートの話聞いてくれないんですか?」


松本先生のからかうような声を背に、足早に職員室を飛び出した。



廊下を歩いているとふいに震えたポケット。


取り出した画面には相葉くんの名前が。


『にのちゃん、今日行くね』


合鍵を渡しても、こうして律義に送ってくれるメッセージ。


そういうところも相葉くんらしくて。



…相葉くん。


こんな俺のこともらってくれて…


本当にありがとう。


これからもずっと…


一緒にいようね。




『うん、待ってるね』






『消費期限は本日中』end

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