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赤い糸

第13章 With you


「ホント、あのドヤ顔見せたかった~」

ミーティングと称される飲み会。

璃子ちゃんがアメリカに行くことになったと緊急連絡網を廻したらたくさんの人たちが集まった。

「私も初めて見たもん、あの勝ち誇った顔。」

「ホント、あの遥香のひきつった顔が忘れられないよ。」

テーブルでは璃子ちゃんが振る舞った武勇伝に花が咲く。

「あぁいう一面があったんだな。」

「京介さん!もう止めてください。私だって必死だったんですから…」

ガツンと京介さんが言うつもりが、璃子ちゃん自らがある意味男前に大きな爆弾を落とし

「嫁さんにしたら尻に敷くタイプかもな。」

「もう!長谷川さん!」

完全勝利っていうのかな。

遥香さんは木っ端微塵に粉砕されて見事に散った。

「璃子ちゃんが啖呵切るところ見たかったなぁ。」

「だから、切ってません!」

記憶喪失になった璃子ちゃんは、一番大切なものを必死で探し廻る間にこんなにも強くなったんだ。

美紀と俺は一番近くで二人を見続けてきたからその姿に感慨無量なんだけど

「璃子ちゃんの記憶が戻って本当に良かったですね。」

「まだ針の穴ぐらいだけどな。」

先はまだまだ長そうだ。

「そういえば…京介~アンタ来週誕生日じゃなかったっけ?」

「あぁ。」

「じゃあその日はラブラブだね。」

そうなんだ。京介さんの誕生日が来週に控えているんだけど…

「…誕生日?」

美紀の話じゃ出発日の関係で二人ではお祝い出来ない。

京介さんは璃子ちゃんを気遣うように

「いや、それは無理なんだ。」

みんなにハッキリと伝えるんだけど…

当の本人の璃子ちゃんは申し訳なさそうに京介さんを見上げて

「あの…お誕生日…いつなんですか?」

現実を突きつける。

「璃子が行ったあと。だから気にすんな。」

璃子ちゃんの誕生日だったホワイトデーも二人で祝うことができなかったから、今回は…ってみんながみんな頬を緩ませていたんだけど

「ゴメンナサイ私…」

現実はそううまくはいかない。

記憶喪失はまだ二人を苦しめる。

「いいんだよ。」

京介さんは俯く璃子ちゃんの肩をそっと抱きしめる。

「でも…」

愛し愛されてるのに時計の針はうまくは回らない。

「いいんだって。」

こんな常態で離れなければならないなんて…

この二人は神様に何を試されてるのだろう。

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