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赤い糸

第3章 ネックレス


「またか?」

「…うん…でも大丈夫。」

あの事故以来 ある一定のタイミングで起こる頭痛に私は頭を悩ませていた。

「ちょっと待ってろ。」

…バタンっ

達也さんは早々に職場復帰した私を心配して仕事終わりほぼ毎日家まで送り届けてくれていた。

「…イタタタッ…」

コンビニの無駄に明るい光が目の奥へと突き刺さる。

薬を飲んでも治らない、検査をしても異常はない。この不可思議な頭痛といつまで付き合えばいいのか…

「はぁ…」

コメカミを指で押しながらギュッと目を瞑る。

そして…

胸元に輝くお気に入りのピンクゴールドのハートのネックレスに指を添える。

…痛くない痛くない

退院するときにママがお守りに渡してくれたこのネックレス

…バタンっ

「ほら水。頭に当ててろ。」

「ありがとう…気持ちい…」

初めて見たネックレスだったけど見た瞬間に気に入って毎日お守り代わりに着けている。

「車出すぞ?」

でもね、このネックレス デザインが気に入ってるだけじゃないんだ。

何て言うのかな…

触れてるだけで心が暖まるっていうか落ち着くっていうか…

大袈裟だけど何よりも効く精神安定剤みたいなものだった。

「あんまり無理すんなよ。」

「してないよ。あっ、でも今日も達也さんにこき使われてるからなぁ。」

「そうか?だいぶ仕事をセーブしてやったつもりだけど。」

「あれで?」

「あれで。」

彼は子供の私を扱うのが上手だ。

いつも一歩前を歩き痒いところにスッと手が届く。

さっきもそう。コメカミに指を添えたらコンビニを見つけてミネラルウォーターを買ってきてくれる。

「でも…あんまり無理すんなよ。まだ本調子じゃないんだからな。」

「はーぃ。」

院内では無口でクールなイメージを保ってる彼だけど 私の前ではこうやって優しく笑ってくれるんだ。

だから私もその優しさについつい甘えてしまうんだけど…

…イタタタッ

達也さんとこんな風に穏やかな時間を過ごすと何故だか頭痛は酷くなる。

「深呼吸してみ?」

「スーハー…スーハー…」

治すために彼の言うとおりに深呼吸をするのに

…イタタタッ

ダメだ。やっぱり頭痛は酷くなる。

どうしてだろ…なんでだろ…

窓の外は私の心と同じ真っ暗な世界。

早く治らないかな…

私はそう思いながらネックレスに指を添えた。

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