テキストサイズ

赤い糸

第9章 想い


ここの料理を食べればもしかしたら…なんて淡い気持ちを持っていたけど

「璃子…」

それが璃子にとってかえって負担になってしまったのだろう。

大好物のアフォガードを口にしてから堰を切ったように心の声を溢してくれた。

だから 俺も璃子への想いを口にする。

「俺はね、おまえがいないとダメな人間なんだよ。」

小さな手と同様に小さな肩を抱きしめて自分の不甲斐なさを感じるのはあの日から何度目だろう。

伝えて良かったのか悪かったのか…天使と悪魔が頭のなかでまだ論争を繰り広げていた。

「好きだ…大好きだ。」

額を重ねたことでお互いの表情がよく読み取れないのをいいことにもう一度と璃子の心にチープな言葉を並べる。

「もう一人にしないでくれよ…」

どうか届いてくれと必死に願いながら…

それなのに璃子に宿る女神さまは

「迷惑をかけてしまいます。」

俺の胸を押して突き放せと璃子に指令を出す。

「あのなぁ…」

でも俺だって生半可な気持ちで璃子に言ったんじゃねぇ。

「俺だけには迷惑かけていいんだよ。」

そう簡単には引き下がらねぇ。

「でも…私本当になんにも覚えてないですし…それに…やっぱりダメですよ。」

「だから!」

素直に俺の傍に居ればいいって言ってるのに

「私…」

おまえはどうして俺の一番の悩みを

「…アメリカに行くんです。」

笑って言うんだよ。

本当にこの女は面倒くせぇ。

「じゃあ、聞かせてくれ。それは璃子の意思か?」

だって目を細めてるその瞳からは

「璃子の意思で行くと言うなら俺は何も言わない。でも…現実から逃げるためなら俺は全力で阻止する。」

また涙が溢れてる。

「おまえの場所はここなの。」

その涙をもう溢させたくないから胸に抱き寄せ柔らかな髪を撫でる。

「ズルいですよ…」

やっとおまえの心が見えたかな。

「俺はズルいよ。でもな、絶対にウソはつかないから。」

華奢な手は俺のYシャツをグッと握りしめて

「信じていいですか?京介さんのこと…」

待っていた言葉を紡いでくれた。

「ゆっくり思いだそう。」

璃子が背負った心のキズを

「…はぃ。」

そう、俺たち二人で背負えばいい。

「まずはアメリカ行きをどうするかだな。」

二人ならどんな試練だって乗り越えられるはずだから。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ