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赤い糸

第11章 タイムリミット


「見ろよアレ。」

「うわぁ、また堂々と…」

満開に咲き乱れていたサクラも散り 蒼空に深みがかかった4月の中旬

「ホント、わかりやすいですよね。」

球場に現れたのは京介さんに手をガッチリ繋がれた2度目の恋を満喫中のお二人さま。

「そう言えば昨日、璃子ちゃんが京介さん家でカレーを作るって美紀が言ってました。」

時折視線を合わせて微笑み合い 弾むように歩く二人を俺たちはニヤニヤとだらしない顔で眺めている。

「こりゃ、本日もも京介祭りだな。」

「でしょうね、記憶を無くす前も璃子ちゃんを補った次の日は大爆発でしたから。」

幸せの絶頂、まさにそんな感じのオーラが漂う二人だったんだけど…

「はぁ?」

「おまえいつ中坊に戻ったんだよ。」

璃子ちゃんをスタンドに向かわせて 俺らベンチで昨日の桃色な話を聞こうと小突いてみれば

「うるせぇな。俺たちは純粋に愛を育んでんだっつうの。」

フレンチだかアメリカンだかのサッパリしたキスで満足したなんて

「おまえ熱あんじゃねぇの?」

大の大人が頬を染めて言うことなのか?

「ないですよ、もう勘弁してくださいよ。」

まぁ、こんなことでガキみたいに肩を寄せあって話をする俺たちもどうかと思うけど…

「京介さん、それで大丈夫なんですか?」

「何がだよ。」

心配のタネはそこではない。

「アメリカ行きどうなったんですか?力ずくでもモノにしないと時間ありませんよ?」

「時間?」

「あれ?出発はゴールデンウィークですよね?」

そうなんだ。二人で京介さんの誕生日を祝えるか祝えないかのまさに瀬戸際なんだけど

「直也、夏だって幸乃は言ってたぞ?」

「それ違います!美紀から聞いた話だと出発が少し速まってゴールデンウィークに変更になったって…あれ?もしかして…」

「京介おまえ…」

「聞いてねぇのか?」

単純に考えて、話を断れればなんの問題もないのだけれど

「…聞いてねぇ。」

今はまだキャンセル出来ていない状況なわけで

「おい、それは不味くないか?」

さっきまであんなに目尻を下げていたのに

「そうだよ、ゴールデンウィークってもうすぐじゃん。」

明らかに京介さんは動揺した。

でも、この人は強いのか弱いのか

「大丈夫大丈夫、どうにかなんだろ。」

唇をナメながらバッドを手に取り打席へと向かった。

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