どうして私だけ…
第1章 生活
「おかえり」
建物のドアを開けたときに見た顔は、
あんまり見覚えのない、若いお兄さん。
しょっちゅう職員が辞めていく。
そして、しょっちゅう新しい職員が入ってくる。
「名前の札、忘れずにね」
施設では、帰宅すると黄色
外出するときは赤に
名前の札をひっくり返すことになっている。
『小松原凛花』
その札を、慣れた手つきで
黙ってひっくり返した。
忘れる訳がない。
何年やってると思ってるの。
あなたが新人なだけでしょう。
思わず、心の奥底で
そんなことを思う。
だから、凛花にはわかる。
そう思ったことを口にする純奈の気持ちが、
本当はわかる。