幸せの欠片
第18章 欠片は雨に消える
「あ…雨」
ぽつぽつと、振りだした雨に思わず苦笑した
本当に俺は、雨と良くも悪くも縁がある
今日の雨はどちらだろう
相葉さんが一緒だから、多分良い縁だとは思うけれど
「あー、やっぱり振ってきたね。傘持ってきて良かった」
相葉さんも、もう “やっぱり車の方が“ とは言わなかった
バスを降りても、1本の傘に二人で入ればいい
堂々と寄り添って歩ける口実にもなる
口にしなくても、考える事は同じだ
だって傘を敢えて1本しか持って来なかったのが、それを物語っている
「そろそろ、バス来るよ。診察券と保険証、大丈夫?」
「うん、ここに……」
貴重品を入れた小さなバッグから、確認のつもりでそれを取り出した
“ほら“ と相葉さんに見せようとしたその時
それまで弱く吹いていた風が急に強さを増した
「あ…っ」
軽く握っていた診察券があっという間に指から離れた
繋いでいた相葉さんの手を離して急いで立ち上がり
「取ってくる」
待ってて、と相葉さんに告げてバス停から走り出した
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