幸せの欠片
第18章 欠片は雨に消える
風がどんどん強くなる
比例するように雨も急に激しさを増した
診察券が、くるくると舞いながら風に流されて行くのを追いかけている俺は
早く拾ってバス停に戻る事しか考えていなかった
運良く風が治まり、視線の先の地面にぴたりと留まったそれを拾おうと走り出す
「かず……っ!!」
突然相葉さんの怒鳴るような声が聞こえ、何事かと振り返り
「あ……」
その声の意味に気付いたのは、聞き覚えのあるブレーキ音と同時だった
目の前には車が迫っている
はっきりとそれが分かるのに
やけに時間の流れを遅く感じるのに
…俺の身体は全く動かなくて
次の瞬間には、強い衝撃を感じて地面に叩きつけられていた
危険な瞬間はスローモーションみたいに感じると聞いた事がある
だけど
これがまさにそうなのか、と思った時には既に事は起きた後だ
「かずっ!…かず!!」
相葉さんの声が近くで聞こえるけど、答えたくても答えられない
段々と視界が狭まっていくけど、抗う事も出来なかった
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