幸せの欠片
第7章 “好き“ のキス
椅子に座ったまま抱き締められて、身動きが取れなくなった
だけど、嫌だとか気持ち悪いとかの感情はやっぱり浮かんでは来なくて
「かず……」
相葉さんが名前を呼んだ時、俺は何故か頷いていた
それが何を意味するのか
…そのくらいは、子どもじゃないんだから分かってる
だけど “どうぞ“ なんて言えないし
このまま待っているのも、何とも言えない気持ちになってしまうから
相葉さんの肩口をギュッと掴み、少し力を入れて目を瞑って時が過ぎるのを待った
“好き“
そう聞こえたのは、空耳なんかじゃない
だってそっと重ねられた唇は、さっきなんかとは全然違って甘く感じてしまう
離したくない、とさえ思ってしまう
そして漸く気が付いた
初対面から不思議と嫌悪感がなかった事
話すのが苦手なくせに、違和感なく話せた事
メールが来るのを楽しみにしてた事に、“声が聞きたい“ と思った事
ー…最初から、俺も相葉さんが特別だったんだ
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