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蜉蝣の羽化

第1章 悪い人たち

其れからというもの、当たり前の話だが私の人生は転落の一途を辿った。

勉強は、放棄した。人生も、放棄した。
何があってもどうなっても構わない。
それが寿命だと、そしてそれが早くきて仕舞えばいい、と…

本当の名前も知らない悪い奴等とすぐに仲良くなった。
カツアゲを覚えた。
学校をサボって溜まる部屋ができた。
精神科の薬でトリップすることを覚えた。
鬱のフリをしてせっせと病院に通い薬の名前を指定しては貰い仲間たちと分け合ってトリップしている間は現実も自分が置かれている立ち位置からも逃れられる方ができた。

……そして、その頃から私の自傷行為が始まる。
後で知ったが、「乖離」という状態らしい。
病気のフリをして居たら本当に病気になってしまった…精神と、肉体が離れている感覚…
それが怖くて、生きているのか死んでいるのか分からなくて、手首を切る様になった。

初めは薄皮一枚で痛みを感じることができた。
温かな血を流せば生きていると実感出来た。
その代わり、もう、戻れないんだな、とも思った。
戻れない、というのが場所なのか観念的なものなのか、それすら分からないけれど……

そしてそれはエスカレートする。

リストカット経験者ならわかるだろうが、痛みが生きている証、深く深く切る様になる。
私も例に漏れずばっくりと手首に傷をつけビニールをかけたごみ箱に血を流し続けた。
深く切ると、少しのタイムラグがあって、その後に血が流れる。
私は自分の内部を見るのが好きだった。
人間なんて所詮、物事を考えることができても、どんなに美しくても醜くても皮膚一枚剥いでしまえば肉と血の塊だという事が妙に私を安心させてくれた。

そして、其れだけ学校に行かなくても理事連の孫である私は2年に進級した。

其処から私の人生は更に変わっていくことになる。
とある事件をきっかけに。

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