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無表情の宇野くん

第1章 無表情の宇野くん。

中学三年間、ずっと同じクラスの宇野くんは、入学してから今の今まで、一度たりとも、表情の変化を見たことがありません。


表情の変化どころか、声すら聞いたことがないのだ。


私はそんな彼のことが気になって、彼のことを追いかけ回し、彼のことについて調べようと思ったわけでして。


けっして、怪しいものではない。


今日、宇野くんは、掃除中の同級生が床に置きっぱなしにしてしまっていた雑巾を踏んで、顔面から地面に着地した。


鼻血まで出ていたのだが、宇野くん本人は無表情で、そのまま歩き去っていった。


保健室に行ったのだろうかな。


ちなみに私はこの時も、宇野くんを観察していた即ち、掃除なんてしていない。


怒られないよう言い訳を考えなくてはなるまいな。

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