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あと3秒だけ。

第11章 欲張りな心。


『貴久さん.....私、貴久さんが欲しい…っ、』


不思議と私の目には涙が溜まっていた。

潤む視界で見た貴久の顔は

どこか切なくみえた。

そして私をぎゅっと抱き締め、

『今日、有紗の用事済んだら俺の家においで。』

それだけ言うと、

貴久は部屋を出ていった。


今まで、自分から意見を言ったり

自己主張をするのは苦手だった私が

初めて『欲しい』と言うとは

自分でも想定外だった。


欲張りな心の、歯車は少しずつ回っていた。

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