君がいる風景
第11章 高鳴り
自転車置き場の小さな祠の前
今朝も手を合わせずにはいられなかった
気前のいい神様、ごめんなさい
せっかく神様のおかげでバイト先で出逢えて
やっと仲良くなれたのに
俺…大野智くんのことが
好きになったみたいなんです
どうかこの気持ちを隠したまま
智くんと仲良くいられますように
どうか、俺が大学から戻るまで
智くんが俺の部屋に居ててくれますように
乗り込んだ電車で同じ授業の友人から
ぼんやりしてるだの、寝不足だろうとか
言われたりしたけど、気の無い受け応えで
適当な会話になってた。
授業中もずっと
気付くと人差し指をくちびるに押しあててる
自分がいてた。
智くんのやわらかなくちびるの感触
智くんの腕の中のぬくもりや、
智くんの息遣いを思い出してしまうと、授業内容なんて全く頭に入って来なくて
気づいたらノートもろくにとれてなかったから
その日の講義内容のノートは友達に借りることになった。