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第25章 ひとひら
なんだか商売上手な店員さんに
うまく乗せられた感は否めないけど、
まーくんとお揃いのブレスレットに
心はほくほくしてる。
にやけそうになる口元をマフラーで隠し、
もうひとつの目的地に向かう。
駅ビルから出て五分ほど歩いた先にある
小さな洋菓子店。
「いらっしゃいませ。」
カランコロンとドアのベルが鳴ると奥の厨房から
赤いタイを首から下げたイケメンが顔を出した。
お兄さんがこちらにくると、
ぶわっと漂う甘いチョコの香り。
N「あ、予約してた二宮です・・・。 」
「お待ちしてました。」
ニコッと笑うイケメンパティシエさんは
もう一度奥に下がると、水色の綺麗な箱を手に
戻ってきた。
「プレートはこちらでお間違い無いですか?」
N「わ・・・すごい。 」
小ぶりのショコラケーキの上には
"happy birthday Masaki"のプレート。
と、チョコで作られたバラの花。
「気に入っていただけましたか?」
N「あ、はい・・・!
あの、ありがとうございます、この時期に
誕生日のケーキなんて・・・。」
実はここに頼む前に電話したケーキ屋さんには、
クリスマスケーキ以外の注文は
もっと早い予約でないと受けられないと
言われてしまった。
ダメ元でもう一軒だけ、と電話してみたのが
この洋菓子店で、快く予約を受けてくれたんだ。
「クリスマスだろうとバレンタインデーだろうと
誕生日の方にとっては
大事な大事な記念日ですからね。」
そういって微笑むこのお兄さんは
かなりモテるだろう。
N「またきます・・・! 」
「今度はぜひイートインも利用してくださいね」
笑顔で手を振るお兄さんにペコリと頭を下げ、
駅に戻るとそろそろいい時間。
まーくんからはまだなんの連絡もないけれど
そんなに寒くないし、
待ち合わせの駅で待てばいいか。
N「・・・くふふ。」
まーくん喜んでくれるかな。
早く会いたいよ。