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第26章 ちくたく







#A





A「・・・ハァッ、ハァッ・・・くそっ!」





駅前の広場に着いたけれど、

かずくんの姿が見当たらない。






まさか涼といるところを見られた?






A「お願い・・・出て・・・?」




さっきからかけている電話は

何度かけてみても

コール音が鳴り続けるばかり。


送り続けているLINEのメッセージは

既読すらつかない。







A「・・・はぁ、はぁっ・・・ 」






かずくん・・・!










かずくんの実家まで行ってみるか?

まだどこかにいる?

ポケットに携帯をしまい、

もう一度走り出そうとしたその時。






RRR・・・RRR・・・








A "かずくん!!?"



鳴りだした電話には"二宮和也"の表示。

迷うことなく電話に出ると、

紛れもなくかずくんの声。





N "・・・もうかけてこないで。
明日大会でしょ?
体調崩して俺のせいにされるのとか
まじ迷惑だから。おうちに帰って?"




普段よりずっと低い声で、

突き放すように冷たく言い放たれる。





A "きいて?かずくん、涼とは、 "



N "似合ってたよ。緑の"



A "ちがう!あれは・・・!"
N "うそつき、"



A "・・・え。"




N "うそつき。"








俺の言葉を遮るようにそれだけ言うと、

プツッ、と電話が切れた。






その後、何回掛け直しても、

かずくんに繋がることはなかった。












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