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第31章 がらがら





A side









『今日先生からさ、交換留学生として、
1年間ニューヨークに行かないかって言われた。』







その事を聞いたのは2月の中頃。

バレンタインデーが終わったくらいだったかな。




すごいじゃん!そんなチャンス!!




すごいすごいと浮かれる俺とは対照的に、

かずくんは行かないよ、と言い切った。




なんで?と問いかければ、

まーくんと1年も離れるなんて無理!

と彼は可愛く答えたものの、

俺はほんとにそれでいいのか?と疑問だった。






だって、姉妹校のニューヨークの学校は

とってもレベルが高くて、

交換留学に出されるのは成績優秀な生徒のみ。

それも、毎年ひとり、って言うんじゃなくて、

不作の年だと、その学年から

ひとりも行けないってこともあるらしい。

学校側の厳しい基準を通過した生徒のみが

交換留学生として選ばれるっていう、

とっても名誉なこと。




それに選ばれててみすみす断るの?





かずくんのためにも、絶対行った方がいいっ!って

プッシュしてみても、

英語の勉強なら日本でもできるし、とか

別に帰国子女になったところで、とか

最終的には

まーくんは俺と離れ離れになっても平気なの?

と泣かれそうになってこの話は強制終了となった。








でもさ、俺思うんだよね。

かずくんは自分で気づいてないかもしれないけれど

お正月にニューヨークに行ってから

ニューヨークの話をするかずくんは

とってもキラキラしてるんだ。

特に見てきたミュージカルの話をする時。



それまでこんなにひとつのものに夢中になっている

かずくんを見たことがなかったから、

すごく新鮮だった。




『ミュージカルに関わる仕事とか楽しそうだなぁ』




そんな風にぽろっとかずくんが

何気なく溢した言葉が、耳に残った。







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