テキストサイズ

more & more

第32章 春和景名





N「てかおーちゃんって会話英語?」






おーちゃんはつかみどころのない人だ。



自分の話はほぼほぼしないし、

おーちゃんののんびりペースに巻き込まれているようで、

いつのまにか俺の居心地のいい空気で包んでくれる。





O「一応はな。
たまにカタカナ英語だなって痛感するけど。」




N「あー、わかる。」





日本にいた時は、交換留学生に選ばれるほど

この人の成績が優秀だなんて知りもしなかったし

いまだに

英語でクラスメイトとしゃべってるなんて想像できない



N「ね、あの人めっちゃ潤くんに似てない?」



O「お前それ眉毛だけだろ(笑)」




俺と会話する時はずーっと日本語だし。



まぁ大声で話してたって

周りのやつにどうせわかんないってのは解放的だけども。








O「にのはリンカーン・センター行ったことあんの?」



N「いや、はじめて。」



うちの両親は、俺がアメリカに来てからは

離れ離れだった時間を埋めるかのように

休みのたびに観光名所に連れて行ってくれた。



その中でも俺が興味を惹かれたのは

やはりミュージカルで。



見れば見るほどどっぷりとその魅力にのまれていった。

今日は、おーちゃんに付き添ってもらって

リンカーンシアターという劇場に

初めて観劇にいく予定だった。





N「今日のはね、日本人の人が主演なんだって 」



O「へー、日系、じゃなくて日本人なの?珍しいね。」



N「そうみたい。
マサ・サカモトって最近アメリカでも話題みたいだよ。」



ふーん、と俺の横を歩くおーちゃんが、

唇を尖らせながら前を向いたまま問いかける。



O「・・・にのってさぁ、歌上手いじゃん?」



N「ん?・・・そお? 」



O「そんな好きならさ、自分もミュージカルやれば?」



N「はぁ??」



O「そんな好きなら
ミュージカルに関わる仕事に就けばいいじゃん。」




N「いやいやいや・・・無理でしょおれなんか。
見てるくらいでちょうどいいよ。」




唐突に真面目な顔してそんなこと言い出すから

けらけらと笑いながらかわせば、

なおも真面目な顔のまま

こちらに視線だけを向けるおーちゃん。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ