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1985年空は蒼かった~イノセントスカイ

第90章 ギターとバイク

尾崎豊

僕らの世代では絶大的なカリスマで、彼の歌は悩み多き10代の代弁者として人気を誇った

僕も尾崎豊の曲を聴き、【15の夜】や【17才の地図】等は僕と同じ頃の年に作った曲で、こんな天才がいるのか?と衝撃を受けた

歌詞の中に出てくる10代は自分を含め、ほとんどの連中が抱いていた気持ちなんじゃないか

要領の良い優等生

綺麗事ばかりの偽善者

何もしない傍観者

そんなヤツラはくそ食らえ!的な歌で僕らの魂を揺さぶった

(僕には理解者がいない、僕は独りなんだ、なのに僕は何故こんなに色んなしがらみを持ちながら生きているんだ?)

そんな屈折した思いを抱えながら尾崎豊の曲を聴いて自分の世界に浸っていた

僕もこうやって音楽でストレートに自分の事を表現出来たらいいだろうなぁ、そんな事すら考えていた

で、当然の如くギターが欲しくなる
ああいう風にギターを弾いてみたい
楽器が出来なきゃ話しになんないだろうと思い、放課後は楽器屋を見つけ出しては自分の予算に合ったギターを探していた

ギターといってもフォークギターではなくエレキの方だから、楽器以外にもアンプやらチューナーやらが必要となってくる

(流石に高いなぁ…)

僕は16になったらバイクの免許を取るつもりでいたので、ギターを買ったらバイクの免許に充てる費用が無くなってしまう
バイクとギター、どっちを取るか散々迷ったが、ギターを買うのを断念した

バイクとギター
高校生にとってはこの2つは無くてはならない程のアイテムで、ステータスの1つと言っても過言ではなかった

バイクとギターがあるだけでレベルアップしたかのような錯覚さえ感じた

今思えばなんであの2つに拘っていたのかよく解らないが、多分ファッションの1つだったような気がしてならない

これといった取り柄の無い僕がバイクを乗りこなし、ギターを弾ければカッコいいだろうなという単純な動機に過ぎない

そう考えると自分は随分と単純な人間だったなぁなんて思ってしまう

でもこの頃って、ほぼ女にモテたいから、という単純明快な動機だから
とにかくまずは女にモテたい!
(テメーの顔を鏡に映してみろ!何がモテたいだ!この面で女にモテると思ってるのか、バーカ!)

鏡に映った僕がそう言ってるように思えた
まぁ、これじゃモテないよな確かに…


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