テキストサイズ

1985年空は蒼かった~イノセントスカイ

第89章 渋谷のラブホ街

僕が前方から歩いてきた制服を着たカップルがラブホに入っていったのを見て隣にいる波多野に声を掛けた

「ウッソ?制服で入っちゃうの?」

波多野は驚いたようにそのカップルの行動に釘付けになっていた

(どうする、オレらも入るか?いや待てよ、ここで拒否される事もあるだろう
そん時はどうする?行くか?止めるか?)

僕は心の中でかなり葛藤していた
波多野とホテルに入りたい、しかし断られたらどうしようか?

横目で波多野をチラッと見てみる
波多野はこの場所が恥ずかしいのか、下を向いたまま歩いていた

(あぁ、行きてえ!ラブホ入ってセックスしてぇっ!)

この事しか頭になかった
なんせヤリたい盛りの15才の僕の頭の中はそれしかなかった

でもどうしようか?どうやって波多野を誘うか?

(ちょっとそこで休憩しない?)

いや、これはあまりもわざとらしい

(波多野好きだ!だから入ろう!)

これもストレート過ぎて波多野が引くだろう

何かいい言い方はないものか?
さりげなく、そして拒まれない言い方を

(浮かばねえ!何も浮かんでこねえ!どうしよう!)

何も思い浮かばずにただウロウロとしているだけだった

「小野っち…」

波多野が小さい声で呟いた

「あ、うんナニ?」

「アタシね…」

「うん…」

(まさか波多野から入ろうって言うのか?)

「…トイレ行きたくなった…」

「はぁ?」

「いや、だからトイレないの、この辺に?」

さっきからトイレ行くのを我慢してたのかよ?

「あぁじゃああの店に入ろう」

僕はホテル街から少し外れた喫茶店に入った

(何だこの展開は…?ラブホ行けると思っちゃったじゃないかよ!)

僕の思惑は外れたが、波多野が僕とラブホなんかに入るワケがないだろ、と自分に言い聞かせながら窓の外を眺めていた

「ゴメンゴメン、急にトイレに行きたくなったから…」

波多野がトイレから出て席に座った

「もっと早くに言えば良かったじゃないか。そこまで我慢する事じゃねえだろ」

僕は波多野が終始下を向いていたのはラブホに入る覚悟を込めていたのだと勘違いしていた
「だって中々言い出せなくって…」

まぁ僕も波多野にホテル入らない?って言い出せなかったが
結局、僕らは喫茶店に入り、また渋谷界隈をプラプラとしながら帰路に着いた
あぁ何時になったら初体験出来るのやら…

ストーリーメニュー

TOPTOPへ