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1985年空は蒼かった~イノセントスカイ

第30章 編入試験受けてみたら?

「でも仮にそうだとしても、向こうはオレの事を何とも思ってないはずだよ」

波多野は僕の事をどう思っていたのだろうか?

「うーん、それはわかんないよ。ただ端から見ると、小野っちと慶子は仲良くしてたし、そう思ってた子も多かったんじゃないかなぁ」

そうなのだろうか…いや、気持ちが揺れ動いてしまう!さっき思い出として閉まっておくんだと決めたんだ

杉下がカップを手に持ち、窓に目をやった

(会話が続かねえ…)

言われてみれば、僕の隣の席は目の前に居る杉下だが、僕は杉下よりも、前の席に座っていた波多野とよく話をしていたケースが多かった

宿題のノートを貸してくれたのも波多野だし、シャーペンの芯をいつも貰ってたのも波多野だ
おまけに給食のトマトまで貰って、波多野に世話になりっぱなしだ

杉下とはそれなり会話をしていたが、波多野と比べると挨拶程度の軽い会話しか思い浮かばなかった

僕は天井を見上げ、ぼんやりとして杉下は窓の外を見ていた

向かい合った席で何を話していいのやらわからずに、僕らは違う方向を見ていた

「小野っち」

「ん?」

「ボタンありがとう、来月からは駅で会うようになるよね」

そうか、高校生になれば通学の途中でしか顔を合わす事は無いだろう

「そうか、そうなるよな…」

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