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碧い空に出逢えて ~ 羽ばたく鳥 ~

第1章 澄みきった青空

病院の紹介状を手に

いよいよ上京する日を迎えた私



家族に見送られ

夢と希望に満ちて・・・




いいえ…正直

そんなことはありませんでした。




そんな・・・本当に若い

幼い頃とは違います


状況も…そもそもの目的

そのものが違います



現実的な考え方をするようになる

それは必然的で



希望を持つことに負けないくらい

不安だっていっぱいでした






そして、もうひとつ私が抱いた感情



〃こわい〃





それは…懐かしくもあり

また一からやり直しとなる

都会での一人暮らしへの不安



若い時とは違う、色々ちがう



あの土地で…私ひとりで

昔のように…ましてや制限のある私が

やっていけるだろうか



そんな不安があるのは勿論です


けれど・・・私が

心の奥で本当に




私が心配してたのは


結構・・・暗い理由





後ろ向きな理由でした






あの人に・・・もしも・・・


もしも遭遇したら・・・と






なんて






あの人?




いえ・・・それは




あの人・・・〃元夫〃です





人間の恐怖心や記憶は

そう簡単には消えない






別に


ばったり出くわしたとしても



もう私が

その影に怯えることなんてないのです





他人同士



もう、橘と私は



本当の他人同士なのだから





なんて




実際の所そんな…後ろ向きな

悪い心配に密かに支配されていた私は




また踏み出す一歩を前に


そんなことにばかり


どこかで怯えていました






だから・・・この時の私は



まったく想像もしなければ




頭の片隅にさえ・・・なかったかもしれない






思い出すことはない

確かにそうでした






だけど・・・この時

頭にあったのは

あの人の事ではありません






〃あの人〃のことが



頭の・・・どこにも



少しも







だから・・・




〃あんなこと〃が起こるなどと




本当に


思ってもみなかったのです





少し暗い気持ちをひた隠し

私は・・・あの日と同じ

澄んだ〃青い空〃を見上げて

飛行機に乗り込みました

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