
碧い空に出逢えて ~ 羽ばたく鳥 ~
第2章 薄紅色の奇跡・・・
『あの・・・この物件は・・・』
内覧しなくて結構です・・・と
本能のように
断ろうとしていました
見たところで…予算オーバーな家賃だもの
希望はしないし、それなら
やっぱり手間をかけさせるのは悪いもの
そう言い聞かせて
早く記憶から掻き消そうとするように
私は情報用紙を返そうとした
なんだか・・・涙が出そうで
「どうかされましたか?
お気に・・・召しませんかね??」
『ハッ・・・、・・・ぁ…いえ
なんでも・・・ありません』
結局、断ることもならず
出発しました
私の目星をつけていた物件を数件
そして・・・いよいよ最後
そのオススメ物件の場所に
車が停まりました
「お疲れ様でした
あ、この辺はお花見シーズンは最高で…~」
足の不自由な私を気にかけてくれて
ラストスパートと言うように
最後の一件の案内に入る営業マン
ドクン・・・ドクン・・・
私は・・・思わず
自分の胸元のネックレス・・・
正確には
胸に下げている指輪を
服の上から
無意識にギュッと握りしめていた
別に…うろたえることなんてない
元夫にしてもそうだけれど
あの人には・・・もっと
元より
会うはずが・・・ないから
あの人は・・・この地にはいない
冷静になって私は
案内されるそのアパートへの道を
一生懸命歩いた
「どうです?良い風景でしょう?」
『わ・・・ぁ』
アパートへと続く並木道
満開の桜が
アーチのように
花道を作る絶景が広がっていた
『・・・』
〃こんな・・・景色だったな〃
