甘美な吸血〜貴方の餌になりたい〜
第3章 似てる人
たどり着いた海は、いつものように、静かで穏やかだった。
あの日と同じように、穏やかに波が揺れていた。
ただ違うのは、あの人の姿がどこにも見当たらない事だけ。
やっぱり、ダメだったかぁ…。
そう簡単には、逢えないよね…。
いつも癒されに来ていた海。
いつもは、帰る時には明日も頑張ろうと前向きな気持ちになっていた。
でも、今日は違っていた。
あの人に逢えなかった事で、より一層寂しさだけが、積み重なってしまった。
いつもと同じ景色なのに…。
あの人がいないだけで、こんなにも意味がないものになってしまうなんてね…。
「いつか、また逢えるといいな…。」
誰もいない静かな海に、私はそっと呟いた。