甘美な吸血〜貴方の餌になりたい〜
第7章 初めての夜
痛いはずなのに、痛みは全く感じない。
寧ろ痺れるような甘い感覚が広がっていく。
快感に瞳を閉じて浸っていると、紫艶に傷を見るように言われ、瞳を開けて傷を見ると、何もなかったように、元の肌に戻っていた。
「こうして傷もなくなる。そして、人の記憶もなくせる力も俺はもっている。だから、最初に詩音莉と会った翌日、傷も記憶もなかったんだ。俺が消したからな。」
「もう忘れたくない…。」
「お前の記憶を消す必要は、なくなったからな。もう消したりはしない。」
「紫艶の事が好き…。」
「…………。」
私の告白に紫艶は何も言わずに、また私の唇を塞いだ。
それはまるで、これ以上何も言うなと言うように…。