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好きにさせて

第14章 結婚



ふと茜に目をやると

茜も
俺と同じ
家族を見つめていて


さっきまで
ライトアップでキラキラしていた
茜の瞳が
潤んでいるように見えた



そして茜は
その家族を見つめたまま
俺の名前を呼んだ


「尚」


「ん?」


「別れよっか」


「え?」


聞き違いか?

驚いて
茜の顔を覗き込んだけど
茜は
あの家族を見つめたまま
話を続けた


「別れて、私と」


「な、何言うてんねん
俺は別れへんで」


「別れて」


「別れへん。
だいたい
なんで今そんなこと」


「嫌いになったの」


「……」



「尚のこと」



そう言うと同時に
茜の瞳から
涙が溢れ落ち


俺の頭の中が
真っ白になった




「きゃー雨降ってきちゃった!
みゆちゃん!
さ、走るよ!」


「うん!」


ザーーー


突然の雨


周囲の客は
一斉に走り出し

さっきの家族も
走ると言った女の子を
雨から守るようにして
お父さんが抱き上げ
走り去ってしまった



ライトアップの前には


ずぶ濡れで
ベンチに座ってる
俺達二人だけ






俺を

嫌いだと言った茜と

嫌いだと言われた俺





ザーーー……





俺は

頭が真っ白なまま

雨で誤魔化しながら

涙を流し続けている茜の手を握り



ベンチから腰を上げた




「行こ」



「……」



「写真、撮られへんかったなぁ…」



「……」



「よう話して

仲直りしてから
また来たらえぇか」



ザーーー…




「…うん」



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