テキストサイズ

桜花楼の恋

第8章 明かされた正体

河「宏光、頑張れ」

五「大丈夫さ、お前なら」

千「くっ、頑張れ宏光」

塚「踏ん張るんだ」



すると、誰が言い出したわけでもなくみんな一斉に丸障子の前に集まると手を握り拳にし口々に言葉を発し。



ニ「‥‥‥」



本当なら、覗くべきものではないことは分かっていてもそうせずにはいられず。

障子の隙間から、重なり合うかのように顔を寄せ部屋の中を伺ってしまう。

そしたら…


横「顔を上げ、よく見せてくれ」



その先様って客の顔が視界の中に飛び込んで来てさ。



戸「うっ、嘘!?あれが」



藤ヶ谷とたいして歳、変わらないじゃん。



五「これって運がいいって言っていいのか」



見た目、優しい笑みを浮かべた姿は決して悪い性格の持ち主には見えず。



塚「よっ、良かったぁ」

千「なんかホッとしたよ」

ニ「‥‥‥」



大丈夫かもしれない、そんな安堵感のようなものが俺たち全員を包み込む。

が、北山は。



横「どうした緊張でもしているの?初めてではあるまいに、フッ」

北「べっ…別に‥」

横「もっと傍へ来いって、ほら」



その様子に臆することなく先様は、北山の隣にすり寄り身体を引き寄せ。

しかし、そうする事で逆に俺達の方へ向く形となり。

2人の様子が、全て正面からハッキリと見えるようになってしまう。

まさか、覗いていることに気づいているんじゃないよね?

ふと過ぎった疑問━

わざと見せつけているんだとしたら、こいつ曲者かもしれない。



ニ「クッ」



と、そのとき確かに俺は聞いたんだ二階堂の声にならない声を。



横「聞くところによると、お前は初だしの日より手付けの旦那以外には抱かれた事がないそうだが」



何かがおかしい、そう思ったのは自分だけなのか?



横「ってことは俺が2人目ということになる」



それとも…



横「なら今宵はたっぷりとその違いを味合わせてあげよう、この身体に ニヤッ」



浮かべた笑みに、ゾクッと得体の知れない思惑を感じ俺は不安な思いに囚われる。

けれど、目を逸らすことが出来ないまま。

そこには予想だにしていなかった結果が俺達を待ち受けていたんだ。

あまりにも手荒な…

でも優しさに満ちた横尾渉という、この侍の策略による。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ