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桜花楼の恋

第16章 貫く強さと心

・千賀side

千「北山太夫でございます皆さま、よしなに」



シャリン!シャリン―

遊郭街を埋め尽くす人々の群れ、その中を毅然と胸を張り微笑みながら歩く宏光の姿は凄く綺麗で。

シャリン!シャリン―



「よっ、太夫」

「頑張れよ」



シャリン―

周りからは次々と声が掛かり、親父は嬉しそうにそれを見つめていた。

太夫になるってことは、男娼が自分を護る術を身につける一番の方法だと口ぐせのように言っていたから。

少しでも多く、うちの郭から出すんだって。

んっ、気のせい?だよな、あいつがここにいるわけないし。



旦那「健永、よそ見をするでない」

千「ハッ」



シャリン!シャリン―



宮「千ちゃん、なんに気を取られていたの?」

千「なっ、なんでもねぇよ」



あれから俺は。



千「どうして?なんでタマは連れて行って俺はダメなんだよ」

宮「タマには目的がある、けど千ちゃんは」

千「どこが違うってわけ?俺だって宮田と一緒にいたいんだ離れたくない」

宮「‥‥‥」

千「もっいい、宮田のバカあぁーっ」



ダッ!



宮「千ちゃん」



普通の顔をし話しかけてくるんじゃねぇ、拒んだくせに俺よりタマの方が大事なんだろ。

でも決心は変わらないから、ついて行くって決めたんだ。



番頭「いやぁ、なかなかの評判でしたね」

旦那「この遊郭街では初めてだからな侍の若さまを旦那に持った太夫は」

番頭「えぇ、見るだけでもと客がどんどん押し寄せて来るのは間違いないでしょう」

旦那「高嶺の花ほど人は群がって来るものだ」



親父…



旦那「ところで健永はどうした?姿が見えないようだが」

番頭「坊ちゃんなら今日は疲れたから早く寝ると部屋へ戻りましたよ」

旦那「珍しい事もあるもんだ、フッ」



ごめん、ダッ!




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