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桜花楼の恋

第16章 貫く強さと心

なんでぇこれ!?どうして俺、手なんか縛られているんだわ。



北「うぐっ…むむむっ」



あげく口の中には布を突っ込まれ言葉を発することも出来ないでいる自分、その耳元で。



「久しぶりだな分かるか俺が誰だか?フッ」



こいつ、トッツーの手付けの旦那!



男「あの時は随分と世話になった太夫になったって聞いたから祝いに来てやったぜ」



やめろ、よせ!

必死でもがくも身体の自由は利かず、おぞましい手が胸をさすり始める。

やっ…だ‥うわあぁーっ



男「へぇーなかなか、いい身体つきしているじゃん」

北「くっ…うぐぐっ」

男「お前とあの侍のせいで俺は楽しみを奪われた」

北「んーんっ…」

男「そのうえ戸塚太夫は問屋の若造に身請けなんかされちまい」

北「むむむっ」

男「この恨み身体でしっかり償って貰うからな」



やっべヤられてしまう。



男「ほぉーら気持ちよくしてやるからさ」



んやだ、やだって!



男「どうした勃ってないじゃん」



なるか、お前なんかに。



男「仕方がない手伝ってやるか、ガシッ」

北「んんーっ」



藤ヶ谷あぁーっ、絶対絶命へと追い込まれて行く中。

あいつの顔が脳裏に浮かび、瞳から涙が零れ落ちる。



北「ううっ…ぅ‥」



横尾さんでさえ触れたことがない場所へ、その手が忍び込み扱かれ。

屈辱と悲しみ悔しさが一斉に押し寄せ堪らなくなった、そのとき!ザクッ



男「うぐっ…お前は‥誰…だ‥なぜ俺を…クッ」

北「‥‥っ」

男「ぐふっ」



バタン!

薄暗闇みの中、飛び散る血そして目の前で息絶えた男。

んなにが起きたんで?

ガタガタと否応なしに震える身体を温かい腕が包み込む。



「もう大丈夫だよミツ」



お…前‥は…おっ‥



北「うっ、うわあぁーっ」



ギュッと抱きついた、その中で俺は堰を切ったように号泣した。

恐かった、汚されたら二度と藤ヶ谷に会わす顔がないと。

あいつが、いや皆が必死になって護ってくれたこの身体を。

俺は…おっ‥ガクガクガクッ

それは、支えられている喜びと失う恐怖は紙一重で。

ここはそういう所なんだと、改めて痛感させられた瞬間だったのかもしれない。

油断してはいけないと━




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