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桜花楼の恋

第1章 始めの一歩

源太「心配なら、その店へ連れて行く時ついて行けばいい、それから旦那さまに会い」

北「いいのか?」

源太「向こうも話しがしたいと言っているし」

北「んだか」

源太「じゃ話し進めるぞ、もう断る事は出来ない分かっているんだろうがよ」

北「あぁ」



そう言われ、とうとう俺は決めてしまう。



龍也「兄ちゃん何処へ行くの?」

北「んっ?メシがたくさん食えるとこだ、ニコッ」

瑞希「本当に?」

北「もう腹をすかせ、ひもじい思いをしなくて済む」

瑞希「うん」

龍也「‥‥‥」



そこは、街でもイチにを争うほどの問屋だった。



妻「まぁ可愛らしい子たち、いらっしゃい甘いもんでも差しあげましょう」

瑞希「はーい」

龍也「兄ちゃんは?」

北「兄ちゃんは、こっちで話してっから」

龍也「‥‥‥」



が、自分の傍から去って行く弟たちを見て。



北「龍也!」

龍也「なに?」

北「瑞希のこと頼むわな」

龍也「…はい」



思わず声を掛けてしまったら、なんか感づいてしまったみたいでよ。

あいつ、勘が鋭いから。



旦那「よろしいですか?」

北「ぁ…どうぞ」

旦那「あなた方、ご兄弟の事情は全て源太から聞きました」

北「それで?」

旦那「17ですか、ちょうど売れ時ですね」

北「‥‥っ」

旦那「君のような無垢な少年を欲しがる男はこの先いくらでもいるでしょう」

北「くっ」

旦那「しかし申し訳ないがあの子たちに会うのは今日限りで最後にして頂きたい理由は言わなくても分かるよね?」

北「…はい」

旦那「その代わり慈しんで育てることを約束する」

北「宜しくお願いします」

旦那「では行きたまえ気づかれないうちに」

北「失礼します、クッ」



元気でな、お前ら。

兄貴として、これが精一杯してやれる事だと。



源太「驚くな宏光お前を買ったところはな」



俺は自分にそう言い聞かせ、その場を後にする。



源太「ここさ」



そして、源太に連れて行かれた郭とは。



源太「すげぇだろう、お前なら一番になる事も夢じゃない」



この界隈では、その名を知らぬ者はいないとまで言われているほどの男娼遊郭。

“桜花楼”

こうして俺の身を売る日々が始まろうとしていた、不安いっぱいの中で。




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