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桜花楼の恋

第1章 始めの一歩

・千賀side

今日も俺は、郭の中を徘徊していた。



男「坊ちゃん、あまりウロウロしていると旦那さまに叱られますよ」



だってさ、暇なんだもん。



千「これも跡継ぎとしての勉強のうち、ねっ?ニヤッ」

男「遊んでいるようにしか見えませんが、ハァ」

千「気のせい、気のせい」

男「今日は、新しい男娼が来るんです早々に御自分の部屋へ引き上げて下さい」

千「えっ、いくつ?どんな奴?ねぇ教えて」

男「坊ちゃんにはまだ早すぎます」

千「ちぇっ、ケチ」

男「知ってどうするんです売りもんに手出しは御法度分かっていますよね」

千「そんなんじゃねぇや、ばぁーか」

男「ばっ、バカぁ」

千「いーだ」



ダダダッ!



男「坊ちゃーん」



俺は男なんか抱きたいとは思わない、抱かれる方には興味があるけど。

小さい時から、この世界を見て育って来た。

あっ、河合の若旦那。



河「よっ、健永また暴走中か?クスッ」

千「そっちは相変わらずお目当てのトッツーのとこってわけ?」

河「もち、愛しちゃっているからさ俺」

千「でも籠の鳥じゃ外へは出れないし」

河「出してやるわ俺が絶対にな、フッ」

千「それって身請けするってこと?高くつくよ何てったってトッツーは、この郭きっての売れっ子だもん」

河「覚悟の上、なーんちゃってじゃあなぁ」



ふーん、随分と熱の入れようだな。

裏へ行けば━



千「ハッシー、ニコッ」

橋「あっ、坊ちゃんだぁ」



洗濯している、こいつがいて。



千「名前で呼んでいいって言ってるじゃん、フッ」

橋「だって怒られちゃうんだもん」



“橋本良亮”

まだ店だし前の10歳のガキ、売られて来てからずっとトッツーの小姓的役割をしている。

ここには、いろんな事情を抱え身を売りながら必死になって生きている連中が大勢いた。




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