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桜花楼の恋

第1章 始めの一歩

戸「無理しないで店つぶれちゃう」

河「俺が好きでやっているんだ気にすんな、ニコッ」



それからは来ると決まって1日中、俺を貸し切って他の奴に抱かれなくて済むようにしてくれてさ。



河「トッツー俺のトッツー愛してる」

戸「俺も、河合」



俺たち男娼は、本気で惚れた奴にだけしか唇は許さないことにしている。

意地、誇りみたいなもん。

それは、客もいいって言わなければ無理強いをしてはいけないのがここでの決まり事となっていた。

が、他は何をしてもいいと。

だから、中には暴力的な奴もいて身体中が傷だらけにされてしまう事だってある。

そんなときは。



河「くっそ、俺のトッツーにこんな事をしやがって」

戸「平気さ我慢すれば河合と長くいられる、そう思ったら耐えられるから」

河「トッツー」



郭の中で特定のイロができるのは珍しくはない、俺にとっては河合。

それは必然的にそうなっただけかもしれないけれど、それにも救われていた。

傷だらけでは客は取れないってことで店側はそういったとき、イロを呼び寄せ治るまで安い値で一緒にいさせてくれるから。

俺と河合は、まだ13歳だったころ近くの河原でよく会っていた。

そのときから、こいつの事が大好きでほのかな想い初恋にも似た

お互い純粋に気持ちを寄せ合い、身分とか立場など考えず一緒に過ごしていたあの頃が今では本当に懐かしい。

戻れるものなら戻りたい無理だとは分かっていても、何故なら。



番頭「また負けたのか懲りない奴だあんたって人は、こんな親父もって戸塚太夫も可哀想に」



この人がいる限り、自由になれないのは自分でも分かっているし。



番頭「はい100両」



借金が減ることは、一生かかってもないんだから。




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