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蜜蜂オヤジ。

第22章 3番目の花蜜。

……はぁ

やっぱり予想通りだったか…。

菫は
真実を受け止めることができなかった
残念さとともに
もしかして知らなければ良かったことを
知らなくてはならなくなるかもと
考えていた緊張感から解放された
不思議な感覚を味わっていた。


ただ…。

この前もそうだったけど
あの頃の
お父さんは超がつくほど
仕事一本の強もてな感じで
お家のことも志帆さんに任せっきりで
お家に帰ってくる日も少ない
モーレツ仕事人だったから
私が寺山家の嫁になっていた短い期間に
ほとんど会話らしい会話をしていなかった…


でも
今こうして
会話してると
私のひと言ひと言を
真剣に頷いたり
相槌をこくれたりして
すごく素敵なオジサマに見える…。

今の彼は私よりも3つも年下の29歳。

私がなんでもかんでも
気を配ってあげている
ちなみに彼は
今は私の秘書の一人だが…

仕事は任せられるが
プライベートではなかなか甘えられない。

そうか…
私が彼との交際と結婚に踏み切れないのは。
今まで
うみさんとの離婚のトラウマとばかり
思い込んでいたけど…

もしかして
私は…
社長としてデザイナーとしての
プレッシャーを脱ぎ捨てて
すべてを委ねて甘えられる
大きな安心感を持てる人を求めていたのかも…。



菫のなかに
大作から漂う安心感に
もう少し浸りたい…。
そんな思いが膨らんでいた。

菫は
今…自分の前から
大作が立ち去ったら…
多分二度と会うことはないだろうと
十分に分かっていた。

息子の離婚した嫁と会うなんて
そんな父親はいないだろうし…


そう思うと
菫はつい
もう少し安心感に浸りたい気持ちを
『もしよかったら夕食ご一緒しませんか…』
という言葉にして
大作に投げかけた。

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