ヴァンパイアのCrazy Night
第1章 プロローグ
赤色に染まった巨大な満月が、不気味に闇夜を照らす宵。
外では強風がピューピューと音を奏で、暗闇の中の木々は、その風が奏でるロンドに沿って、葉擦れの音を響かせ踊り舞っている。
その美しい景色を大きな窓越しから眺めているのは、暗い森の中にそびえる館の住人たち。
彼らは、その瞳に恍惚の色を湛えさせ、一向に目線を離さずに、赤い満月に見入っていた。
「今宵の月は、狂気的なまでに…一段と美しいね」
完全に陶酔したような口調で、手元のハーブティーを傾けながら、館の主がそう言った。
「本当、とっても綺麗だね〜。なんか林檎みたい!」
「あぁ、悪くないね。ここから眺める月はまぁ綺麗なんだけど、今宵の月は格が違う。紅い血に染まっているようで…とても綺麗だよ」
容姿がそっくりな二人の少年は、どこか嬉々とした表情を浮かべ、そう言った。