ヴァンパイアのCrazy Night
第2章 彷徨える客人
落下していく中、来るであろう痛みに備えて目を瞑る。
そして、ドサンっ!と、地面に叩きつけられる。
「…あ、れ?」
私、死んでない?というか、思いの外痛みは感じなかった。下に目を通すと、どうやら堆積した落ち葉がクッションになっていて、痛みが軽減されたようだ。
ふと上を見上げれば、優に5メートルはある崖が頭上にドンと広がっていた。そこから落下して傷一つないとは…ある意味不幸中の幸いかもしれない。それにあのコウモリは追い掛けてこないし、ホッと胸を撫で下ろす。
頭を正面と向き合わせて、徐に立ち上がる。そして、その時だったーー
「…ふふふ、大丈夫?」
突然、柔らかい響きの少年の声が、漠然たる場所から聞こえてきた。
私は吃驚して辺りを見渡すが、その声の主の姿は見つからない。
「だ、だれ?どこにいるんだ?」
大きな声でそう問いかけるが、少年はただくすくすと笑うだけで返事は返してこない。