テキストサイズ

僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

その帰り道、さまざまな方向に進む学生たちの間をぬって、花野ちゃんを追跡しがてら脳内お花畑のアルが弾みだす。

「なん なな なんななんな なんっ」

「げ。吉坂が歌ってる…」

少し前を歩いていた男が振りむいて驚く。
黒ぶちメガネの…ん?俺らのクラスの、委員長だな。

「なんだよ?お前、知ってんのか?この曲。タイトルは?」

教えを請うなら、もっと別の言いかたしろよ……。

「"雨にぬれても"」

「へっ?」

アルと俺は声をそろえてびっくりする。
さっきさんざん俺が聞きまわったのに、こんな音楽と無縁そうな堅物から……。

「"明日に向って撃て!"って映画の曲だよ」

俺たちの予想外っていう反応に気をよくした委員長が、饒舌に教えてくれた。

「"明日に向って撃て!"で"雨に?"」

「"ぬれても"。俺、あの映画好きだし、間違いないよ。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォード、かっけぇよな」

アルのお気にソングは呆気なく解明した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ