テキストサイズ

僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

「本人に聞いたら?」

どっちかっていうと、明るい曲。
涙はふさわしくないだろ?
応援歌なのか?

「……」

「お前、奥手もたいがいにしろよ」

「いきなりノックして、この曲なに?って聞くの、おかしいだろ?」

らしくない、らしくない。
初対面の失恋傷心男に、お前、質問してたじゃねぇか。

「別にいいだろ、それくらい。俺が聞いてやろうか?」

「ダメ。お前、女のコと会話するのうまいからダメ」

俺がお前の好きなコ盗るかよ、めんどくせぇ。
そんなことよりもっと本格的な脅威の存在を、知っちまったんだよ……。

「ふうん。あ、ねぇ。この曲のタイトル知ってる?」

俺は、通りを行く女のコに声をかけた。

「あ、いいの。気にしないで。じゃあねー」

という調子で何人かに尋ねるも、首を横に振られる。

「俺も聞いたことあるんだけどなぁ」

「もう終わっちゃったよ」

成果なしって顔すんなよ。
俺は、たいした労力使ってないけどがんばったぞ?
お前、座ってただけじゃね?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ