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僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

「本当にすみません。拾っていただき、どうもありがとうございます」

「ああっ!そんなに頭をさげると、またばらまくから!」

あせるアルに背中からこそっと教える。
「持ってやれ」と。

「これ、教室まで運ぶの?手伝うよ」

そうそう。
靴下2つは俺が持ってやるからと少し先を行き、振りかえってふたりを待つ。

「もう大丈夫です。先パイたちはあちらにご用なんですよね?」

「あちら?ああ、もう済んだ」

だな。花野ちゃんを探しに来たんだから。

「どうしたの?これ」

花野ちゃんの了解を待たずに大きな袋を持ち、アルも歩きだす。

「あ、ありがとうございます!私の兄がここの3年生で、教室に遊びに行ったら…みなさんからいただいたんです」

アルを追ってニコニコと答える。
こんなにいっぱい?

花野ちゃんの兄貴ってよっぽどの人格者?
または、その逆?

あるいは、そのミニスカサンタの賜物か……。
いんや、絶対にコレだな。

「あの、すみません。柊先パイですよね?お荷物持っていただいて、ありがとうございます」

ずっと黙っていた俺にも声をかけてくる。

「そう。知っててくれたの?」

アルの警戒視線をかわしつつ、笑顔で返事する。

「柊先パイと吉坂先パイはすごくカッコいいって、1年のクラスでもウワサがもちきりですもん」

俺をややにらみしていたアルが、花野ちゃんに視線を向ける。

「花野ちゃんはどう思うの?」

「困ってる私に、スマートに手を差しのべてくれて、とってもステキだと思います」

ニコッと笑うその表情に、恋愛感情はやっぱりなさそうで……。

横で「そんな話を振るな」と、アルが俺に砂を蹴りあげる。

どうしよう、あれも聞いてしまおうか…。
ショックの薄そうなところから、ソトボリを埋めていこうか……。
こんな機会、またとねぇ。

「その花のネックレス、似あってるね。ステディから貰ったの?」

くりっと瞳を見開いた花野ちゃんは、顔を赤くしてうつむいた。

「……そんなんじゃないです」

彼女を見るアルに目をやる。
これでお前、あきらめられるか?

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