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僕ら× 1st.

第6章 卒業まで --Ar,Mkt

「途中まで一緒に帰ろ」

机の上に出ていた楽譜を花野ちゃんに渡して言う。
礼を言って彼女は片付け始める。

先ほど降りだした雨が、ザーザー音をたて本降りになってきたことが外を見ないでもわかる。

花野ちゃん……。
こんなふざけた告白してごめんな。
くしゃみにしか聞こえなかっただろうけど。
でも、言えてよかった。
これで俺、あきらめられるかなぁ。

音楽室のドアを開けると、みぞれまじりの雨が降っていた。
誰か、いい天気だとかぬかしてたよな……。
俺の心のなかと同じような天気に、湿気った笑いが込みあげる。

「クルマに先行ってるぞ」

そう言って、柊は手を振って消えていく。
花野ちゃんと俺をいまさら残して……。

「柊先パイって運転されるんですか?」

「俺もできるよ?あー、もしかして、違反とか思ってる?」

「そうですね。でも、うちのお兄ちゃんも早くから運転してました」

彼女はニコニコと笑う。

「俺、花野ちゃんの兄貴になりてぇな」

「え?それ私、本気で嬉しいです!」

だよな。
キミは伊織の彼女だもん。
伊織と結婚したいって思ってるんだよな?

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