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僕ら× 1st.

第7章 伊織帰 --Ior,Kn,Ar

***

8月初旬、特に決まった予定のない中学1~2年生は、自宅近くのまちセンターに集められて、地域の夏祭りの準備に取りかかる。

中学1年生はそろって夏風邪にて欠席。
2年生は、僕と彼女と小津の3人。
ほかの学生は、部活動や家族サービスで欠席している。
区域外に転居したので、僕は関係ないっちゃないんだけど、彼女と参加できる行事にはちょくちょく顔を出していた。

小学校低学年以下の子どもたちが絵を描いた紙と、細い木材とで灯籠を作る。
3人ともそこそこ器用なので、当たりさわりのない会話をしながら淡々とこなしていく。

作業が収束を迎えようとする頃、小津が立ちあがり、男性事務員に話しかけに部屋を離れた。

お前、アル兄が好きなんじゃなかったのかよ?と一瞥するも、どうでもいいことと口をつぐむ。
逆におかげで、彼女とふたりきりになれたことだしっ。

さっそく、彼女に話しかける。
ちょっと気になっていた進路のこと。

「フラウは獣医学部?」

TVの海中映像から始まり、今では大好きな水族館で働くことを目標にしている彼女は、獣医師になりたいと言っていた。

「うん。リルは、経済?」

中学に入ってすぐに、薬学プレをカリキュラムに組みこんだ彼女を見ていたので、わかってはいたけど、獣医か…。
大学は校舎が離れちゃうな。

「そ。経済と経営取ろうと思う」

「ダブル取りするんだ!難しそうだけど、リルならできるよ!」

「今、世話になってるとこで必要っぽいから。僕、恩返ししたいんだ。経済と経営関係の資格取るのが目標」

そして彼女に2度目のプロポーズをするんだと、心のなかで誓う。

「すごいんだね!楽しみだね!私、応援してる!」

「うん、がんばる。だからフラウ、僕から目を離さないでね」

「うん、しっかり見張ってるよ!」

学校外で彼女と過ごせるのは、主に図書館。
彼女と会えて勉強もできる、僕にとっては一石二鳥の場所。
そしてときどき、カフェや映画館に行く。
それがふたりの関係。
彼氏でもないのに、充分すぎない?

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