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僕ら× 1st.

第7章 伊織帰 --Ior,Kn,Ar

彼女の家に着いて軽く演奏したあと、食事を摂ってリビングでゆっくり過ごす。
僕と彼女と兄貴たちの4人で。

これから仮眠して、帆澄兄の運転で星を見に行く予定。
さて、いつふたりきりになれるだろう。

ふたりの兄貴にとっては家族内な僕ではあるけれど、彼女の部屋に…しかも夜に入ることは許されないだろう。
僕の部屋に連れこむことだって不可能。

彼女が部屋に入る前の廊下に引きとめて、もしかしたら兄貴たちが聞き耳をたてているかもしれないけれど、そこで……。

聞かれたって別にかまわない。
肝心なのは、真剣に彼女を見て伝えること。

大丈夫、自信を持てよ。
今日も彼女は、僕のネックレスをつけてくれている。
僕の左手首には彼女のお守りがかかっている。

「こんらがらっちゃうって言いにくいね」

「言えてないよ」

TVを見ながら彼女に突っこんでいたら、僕のスマホに緊急呼びだしがかかった。

「はい。え?今から?……わかった」

3人が僕を見る。

僕は焦ってた。
早く打ちあけないと、彼女が僕をあきらめてしまう。
ほかの男の誘いに乗って、そのまま戻ってこないかもしれない。

「僕、帰らなきゃ。何か用事ができたみたい」

「むこうに泊まるの?」

むこうに泊まる?
僕の家はむこうだけど、彼女がそう思ってくれるのは嬉しい。

「うん、そうなる。また来るよ…フラウリィ。僕はキミを好きだよ」

突然耳元でそう言われた彼女はポケっとしたあと、満面の笑顔でこう言った。

「私もリルフィを好き!」

よっしゃ!間にあった!
と、ここで抱きしめたいけど、兄貴たちもいるから。

「よかった!じゃ、また!」

何か言いたげな兄貴たちにも手を振り、可愛い彼女にうしろ髪を引かれながらも僕は宮石邸をあとにした。

"私もリルフィを好き"

自宅まで風を切りながら、彼女の言葉を胸に何度も抱きおこした。

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